チャプレンのブログ・ ALSなんか大嫌い
アメリカで働くホスピスチャプレンのブログです
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2021年03月23日
12:13
カテゴリ
ブログ引っ越しのお知らせ
このたび、ブログを引っ越しました。
引き続き、以下のサイトにてブログを続けますので、
どうぞ これからもよろしくお願いします。
https://tororogirl.hatenablog.com
2021年03月16日
14:24
カテゴリ
ホスピス・チャプレン(シアトル)2016-現在
もう一度 飛びたい
84歳の白人男性、Hさんはカクシャクとした紳士という感じの方
複雑な心臓病で独居ができないほどに病気が進み、
そのうえアルツハイマーの症状も出てきたこともあって、
東海岸から シアトルの娘ケイトさんの家に身を寄せられた
そして、間もなく医者からホスピスを進められたのだった
Hさんは 良家の出身で 裕福な環境で育たれ
成績優秀で大学を卒業、そしてエンジニアリングで修士号を取得
電気系のエンジニアとしてアメリカ大手のメーカーで活躍
退職前までに かなりトップの方までのぼりつめられた
退職後は、熟年離婚され、シニア・コミュニティーで
多くの友人たちに囲まれて楽しい生活を送られていた
娘のケイトさんの住むシアトルには毎年夏になると1か月
遊びに来ておられたという
実は、Hさんは娘婿のクリスと大親友。
娘のケイトが初めて交際中のクリスを父親のHさんに紹介したとき
Hさんはこの青年を大いに気に入り、娘に
「いいかい、ケイト、
もし、クリスが何か質問をしてきたら、(例えばプロポーズのような)
絶対、Yesと答えるんだよ」と
忠告しておいたという
Hさんの期待通り、晴れてケイトとクリスは結婚
Hさんは大喜びで、二人を祝福された
というのも、クリスもエンジニアで思考回路が似ているのだ
娘婿のクリスは飛行機関連のエンジニアであるばかりでなく、
趣味が小型セスナ
アメリカでもっとも古いセスナ機種類の収集家でもあり、
すでに飛べなくなったセスナを買い取って修理しては
あちこちのローカル飛行場に保管しており、
それを20年ほどやっているうちに、
アメリカ中に 数十のセスナをもっておられる
訪問させていただいているご自宅の庭にも修理中のセスナが一機あるのだ
Hさんはクリスと大の仲良しになり、
クリスから飛行操縦の手ほどきを受けて、
セスナを操縦させてもらうために、毎年1か月遊びに来ておられたのだ
初めて、チャプレンとして訪問させていただいた際、
「今のあなたにとって、一番大事なことは何ですか」と質問すると
Hさんは、
「春になったら、クリスと一緒にセスナで飛ぶことです」と答えられた
「飛ぶことの魅力は何ですか? どうしてそんなに飛ぶことが大事なの?」と
質問すると、
「空に上がると、景色がきれいなのはもちろん素晴らしいんだけど、
地上からとは全く違った視点から、世界を見ることができて、
自分の存在がいかに小さいか、
自分の悩みがいかに小さいか、わかるんです」
「あのエキサイトメントな気持ちを味わうと、とりこになりますよ」
「クリスがいつもアドバイスしてくれるんですが、
『セスナは、無理に操縦しようとしないこと』
『セスナは 飛び方を知っている
空気がデコボコしているときには、なんとかスムーズに飛べるように
必死で操縦しようとするんですが、
セスナに任せて、セスナの自然な飛び方にやらせてみるとうまくいく」
私はそれを聞いていて、
「それって人生に似ていますね
悪戦苦闘して、あらがうこともできますが、
時としてじっと流れに任せて見守ることも必要ですよね」と
感じたこと、教えられたことを述べさせていただく
まさに、Hさんは人生の終末にさしかかっており
どうすることもできずに、じっと自然な体の弱りを
受け止めるしかないところに おられるのだ・・・
ケイトは、自信たっぷりだった父親の体が弱り、
そのうえ、アルツハイマーまで患って、自信を無くしていることを
何とかサポートしようと、
私の訪問日に合わせて 写真を整理し、スライドショーにして
大画面のテレビに映し出し、父の良き日の思い出をたどって
Hさんが 嬉しそうに写真のことを私に説明するのを
優しい目をして聞いている
成功したキャリアと業績
そのことに誇りをもって、自慢話をたくさんもっているHさん
ケイトはそんな父親に、そのままの姿でいてほしい
変わらない今まで通りの父親として とどまってほしいのだろう
そして、退職後は娘婿クリスと
5歳のいたずらっ子のような笑顔でセスナに夢中になっている父親の姿を
娘として一生懸命に支えておられる
先日、訪問が終わって玄関の外に出たら、
クリスが私を追って出てきて、
「義父を訪問してくださって、本当にありがとうございます」と
礼を言われた
春になったら セスナで飛びたいというHさんの希望は
果たしてかなうのだろうか
「お義父さんの様子は クリスからみてどうですか?
セスナに乗れそうですか?
死ぬ前のゴールにしておられるみたいなので、私も祈っているのですが」
そう聞くと、クリスは
「まあ、数メートルは何とか歩行器を使って歩けるようなので、
力のある友達に協力してもらって
何とかかなえてあげられると思います」と言われた
さて、シアトルも気温が上がってきて、春がそこまで来ているのがわかる
Hさんが空を飛ぶ日は いつになるのだろうか
Hさんが飛ぶ予定のセスナ (インターネットより)
2021年03月08日
08:11
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さようなら、Aさん
Aさんは 89歳のフィリピン人男性
若いころフィリピンでは戦後ということもあって、
大変苦労をされ、貧困な生活をされていた
「ちゃんとした靴さえなく、ほとんど裸足だったんだよ」
と当時のことを話してくださった
19歳で、同い年の奥さんと結婚され 5人の子供を抱えながら、
長距離トラックの運転手として働いておられたが、
極貧の生活を抜け出そうと、遠い親戚を頼って アメリカへ
まずは、イチゴ摘みや皿洗いなどの仕事を掛け持ち、
最低賃金の収入 (それこそ1日1ドルとか)
それでも フィリピンよりはずっとましだったらしく
月に2度、妻と5人の子供のために仕送りを続けられた
フィリピンでは、奥さんが
「アメリカのご主人から送金があって、裕福になったね」と
近所の人から羨まれていたという
永住権を得るとすぐに、職業訓練学校で溶接工になる訓練を受け
卒業後、アラスカ、シアトルと溶接の仕事で引っ越すと同時に
フィリピンから奥さんと5人の子供を呼び寄せられた
それまでに数年かかったという
「溶接工の仕事では13ドル50セントもらえたんだよ
たくさんフィリピンに送金できて嬉しかった~」
その後、Aさんは自動車修理店を開かれ、
人を2,3人雇って、自分のビジネスで収入を得られた
「アメリカは、Land of Opportunity
やる気のある人には、チャンスを与えてくれる素晴らしい国だね
ゼロから出発した僕が、今はお金の心配をせずに
十分な老後の生活ができるのだから!」
老後は、ヨーロッパなどいろいろなところを旅行され、
リタイアメントを楽しんでおられた
ところが、2年前に運転中、道に迷われて 交通事故を起こし
腰の骨など骨折されたことで、入院
その時に、末期のガンであることが判明したのだった
ホスピスケアを受けられるようになってからも
ほとんどガンからの痛みはなく、(事故の手術のほうは痛みがあられたけど)
時々、娘さんたちに連れられて 大好きな外食に出かけられるほどだった
熱心なカトリック信者だったAさんは
パンデミックが始まってから教会に行くこともできなくなり、
2週間に一度の私の訪問を楽しみに待っていてくださった
「リア~、よく来てくれたね、ありがとう!」
「教会に行けなくなったけど、教会がここに来てくれる感じだよ」
そして、フィリピンでの思い出や、アメリカでの苦労話をしてくださる
Aさんは 人との接触や会話が大好きで
閉じ込められていることほど 苦痛はない
1年以上も 小康状態が続いて、いつまでもこのまま生きられるのではないかと
誰もが願っていた
ところが、1か月前に、帯状疱疹にかかられ顔の右半分に症状がでて、
1週間ほど臥せって 回復されたと思ったとたん、急速に弱られた
先日訪問させていただくと、辛そうなお顔で、
「死ぬのかなあ、まだ死にたくないよ」
「死ぬのが怖いんだ」と 素直な気持ちを話され
来ていた20歳ぐらいの孫マイケルが、ハラハラと涙を流していた
結局、Aさんはそのまま状態が低下し続けて
昨夜亡くなられたと、カルテを通して知った
最期の最期まで
「パンデミックが終わって、
州知事がソーシャルディスタンスの規定を停止したら、
23人の孫たちと一緒に、3軒のコテージを借りて
バケーションに行くのが楽しみだよ
もう、娘がちゃんとコテージも調べてくれているんだ」と
楽しみにされていたのに
それもかなわぬまま、天国に行かれた
1年以上も、スピリチュアルケアにあたらせていただいたAさんの死を知り、
私も本当に悲しい気持ちでいっぱいだ
今頃は、苦しみから解放されて、天の御国で神様の臨在のもと
憩われているのだろうと知ることが 私の癒しとなっている
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